COLUMN

働き方改革の実践が、
非常時に強い企業を創る

副島 一也 氏
ニュートン・コンサルティング株式会社
代表取締役社長

副島 一也 氏

BCPの推進が働き方改革に直結

自らの経営努力に関係なく、ある日突然資金が枯渇するということは、大変な恐怖です。かつてのリーマンショックの経験が、トラウマとなっている経営者の方も多いのではないでしょうか。

そして、あれから10余年を経た今、世界は新型コロナウイルスの感染拡大という混乱の中にあります。ゲリラ豪雨等の自然災害リスクも加わり、もはや恒常的に危機と直面している状況です。経済活動への影響は避けられず、企業は常に想定外に備えた危機管理に努めなければなりません。

2006年の会社設立以来、リスクマネジメントのコンサルティングを行い、様々なクライアント企業と接してきました。その経験から言えるのは「働き方改革は、危機に打ち勝つ強い組織を創る格好の解決策である」ということです。

弊社では、BCP(事業継続計画)推進の案件を数多く手掛けています。BCPにおいては、唐突に現れる危機に対し、①備えて準備をすること、②適切に対処する能力を高め続けることの2つが重要です。

①については、何らかの経営資源が使用不能になった場合にも対応できるよう、平時から複数の代替手段を用意することが必要です。②については、組織の硬直化を防ぎ、常に柔軟に動ける状態にしておくことが鍵になります。

実は、これらBCPに必須の要素は、同時に働き方改革のための環境整備にも通じています。逆にいえば、働き方改革を進めることが、危機に強い組織作りにつながるのです。

コロナ禍が与えた“気づき”

かつてはBCPというと、1本しかない製造ラインを非常時に備えて2本に増やす、といったことをやらなければならないと思われがちでした。

しかし、主要な代替手段が一つしかなく、しかもそれが平時には使われていない場合、緊急時にうまく切り替えられず、BCPとして機能しないことも多くありました。

非常時にも滞りなく事業を継続するためには、より広範囲にわたり、多数の代替手段を用意しておく必要があります。多くの企業にそのことを痛感させたのが、新型コロナウイルスの流行ではないでしょうか。

コロナ危機によって、企業はテレワークや時差出勤を導入するなど様々な対応を取りました。導入してみて、このような代替手段が十分に機能することがわかったという人も多いはずです。

注目したいのは、このような新たな働き方は、平時においても、ワークライフバランスの向上に寄与するものであることです。働き方の選択肢が広がれば、社員満足度を高め、生産性の向上にもつながります。

BCPの推進と働き方改革が強い企業を創る

平時からの心掛けと余裕ある経営がカギ

このように事業継続のために複数の代替手段を持ち、それらを組み合わせて柔軟に活用することは、BCPと働き方改革の両面からとても重要です。とはいえ、このような取組は一朝一夕に実現できるものではありません。

松下電器(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏は、水をためて流量を調整するダムのように安定した経営をすべきであるとして「ダム式経営」を提唱しました。このように、平時から、設備、資金、人員などあらゆる面で余裕を持たせた経営を行い、代替手段を増やす仕組みを作る必要があるでしょう。

多くの中小企業が資金繰りや人材確保に苦労している中、余裕のある経営を行う、などというと難題に聞こえるかもしれません。

しかし、まずは自分達には無理だという認識や、従来の働き方に関する常識や既成概念から脱することが第一歩となります。できるかどうかではなく、やると決めて進めるしかありません。

毎月50万円の定期預金を始めてみる、事務部門だけでも在宅勤務できるようインフラや就業規則を整備するなど、少しずつでもできることから前に進めるのです。一気には変わりませんし、時間も掛かります。それでも、数年後、チャレンジをしなかった企業は淘汰されるでしょう。

人材確保や仕事の獲得でも優位に

従来の常識や既成概念から脱して、新たな取組を行えば、新たな発見があるものです。

これからの時代は、新たな取組を実践できる企業はますます強くなり、そうしない企業との両極化が進みます。

BCPにしっかりと取り組んでいる強い企業は、同時に働き方改革が進んだ企業として、優秀な人材の確保や、取引先との信頼関係の構築、付加価値の高い好条件の仕事の獲得など、様々な点で優位になるでしょう。

コロナ危機という未曽有の困難において、企業の真の強さが問われる今だからこそ、BCPと働き方改革に注力し、飛躍のチャンスとしたいものです。