COLUMN

男性の育休促進企業から学ぶ、
導入のポイントと効果

伊藤 みどり 氏
積水ハウス株式会社
執行役員ダイバーシティ推進部長

伊藤 みどり 氏

1か月以上の育休完全取得を促進

積水ハウスは「『わが家』を世界一 幸せな場所にする」というグローバルビジョンを掲げています。その実現には、まず従業員が家族とともに幸せであることが欠かせません。その一環として2018年9月から男性の育児休業(イクメン休業)において、1か月以上の完全取得を推進しています。

社長の仲井嘉浩が、出張で訪れたスウェーデンの首都ストックホルムの公園で、ベビーカーを押す男性の多さに衝撃を受けたことが、推進のきっかけでした。

この制度では、子どもが3歳の誕生日の前日までに育児休業を1か月以上取得し、最初の1か月を有給にして、4回まで分割可能としています。併せて、賞与・退職金の算定や昇給昇格に影響しないことも定め、安心して家族や仕事の都合に合わせて取得できるようにしています。

5か月の準備期間を設ける

制度設計の段階でいくつかの問題がありました。男性従業員の比率が78%で、男性育児休業対象者は約1200名いましたが、2017年の男性育児休業平均取得日数はわずか2日でした。

また、住宅建設というBtoCの業態で顧客の理解が得られるのかという問題もありました。営業部門には、30~40代のリーダーや管理職が対象者に多く含まれており、余剰人員の無い中、業績に対する悪影響を懸念する声も聞かれました。

そこで、導入する際に最初の5か月間を準備期間としました。職場において取得時期や分割回数等の他に、業務内容や引き継ぎ相手・方法等を記載する「取得計画書」と、家庭での家事育児分担を話し合う「家族ミーティングシート」で、職場と家庭、それぞれのコミュニケーションツールの整備を行いました。

家族ミーティングシート

また、勤務管理システムとの連動による「申請の簡素化」と「取得状況の見える化」を行いました。これで、協力体制作りの支援に加え、未取得者とその上司に取得を促せるようにしました。

1900人を対象にイクメンフォーラムを開く

イクメンフォーラム開催時の様子

2018年、社内の意識改革として、イクメン休業対象者全員とその上司合わせて約1900人を対象に、イクメンフォーラムを開催。社長自らイクメン休業導入の思いを語り、有識者からは男性の育児家事参画の重要性を訴えていただき、従業員の経験談も共有しました。

以降、フォーラムの毎年開催、社長のブログ、社内のイントラネットのイクメン休業サイト、社内誌を活用した情報発信を行っています。また各種研修による価値の共有や、社内表彰基準に「イクメン休業」取得率を組み込むなど継続的な啓発として全社浸透を図っています。

その結果、本格運用を始めた2019年2月から現在(2020年10月時点)まで、制度の対象となる男性741名全員が1か月以上のイクメン休業を取得しています。

職場のコミュニケーション向上にもつながる

これまでの取組で分かったのは、イクメン休業は、本人の幸せのみならず、職場、顧客、企業イメージそれぞれに良い影響があるということです。イクメン休業に入るまでの入念な準備のもと、本人からは、「育児家事の大変さの中から妻への感謝や育児の喜びを実感し、更に絆が深まった」、「仕事を見直す機会になった」という声がありました。

職場では「コミュニケーションが増え、助け合う場面が増えた」、「子育てをしている女性同僚の気持ちが分かるようになった」というコメントがありました。

顧客の反応も好意的で、採用活動でも「男女とも全員が育児休業を取得できることは企業選択で重要」と好印象でした。

一方、懸念された業績に対するイクメン休業の悪影響は見られませんでした。男性の育児休業は企業にとって有益な施策です。アメリカ・イリノイ大学名誉教授のエド・ディーナー博士らによると、幸福感の高い人の創造性は3倍、生産性は31%高くなるという研究結果が報告されています。

「経営者の強いリーダーシップ」、「精神的な安全性の確保」、「具体的な支援」をキーワードにその企業・業態にあった進め方を模索されてはいかがでしょうか。